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57話 成果

Author: ニゲル
last update Last Updated: 2025-05-30 07:23:44

「なんだその武器……そんなの報告では何も聞いてなかったぞ!!」

自慢の攻撃を銃で受け止められ奴は目に見えて動揺する。

私は試しに魔法の力を銃に込め、奴に向かってゼロ距離で引き金を引いてみる。

「ぐぉぉぉっ!!」

銃口から魔法の力で凝縮された水の塊が発射される。それはドリルのように回転し、奴の鱗の鎧を削りながら後退させる。

「なんだこの攻撃……俺の、俺の鱗がぁ!?」

「じゃあアタイも一発かますかぁ!」

狼狽する奴にアナテマが斧を切り上げて奴の背中部分の鎧を破壊する。そこに合わせてノーブルの剣が十文字に斬り裂く。

「なんだお前ら……急に強く……!?」

武器の使い方が手に取るように分かる。この一週間の鍛錬のおかげだ。

「最後はアタシに任せて!」

イリオが槍を器用に振り回した後奴に投擲する。それは空中で四つに分裂し、蛇のように動き奴の両手足を拘束する。

「熱い熱い熱い!!」

槍にはイリオが込めた熱が多量に含まれており、奴の体がジューと音を出す。

「マジカルヒート……!!」

全身に籠る熱と槍からの熱を全て右手に凝縮させ、彼女は渾身の右ストレートを奴の腹部に放つ。

「うぐぉっ!!」

衝撃が全身を伝わり鎧が粉々に砕け散っていく。さらに奴は熱に炙られ大ダメージを受け、戦闘不能になる大怪我を負うのだった。

[キュアリン聞こえるかい? 配信は切れる? 尋問をしたい]

[もう切ってある。人が来ない所まで運んでくれ]

キュアリンは先を見据えて動いていてくれて、私達は変身をしたまま奴を慎重に運び人の来ない山奥まで行く。

「なんとか間に合って良かったよ。武器の使用許可をなんとか貰えてな、すぐに飛んで戻ってきたんだ」

「本当に間一髪だったよ……でも今回もなんとかなった。やっぱり私達は強くなってる……」

こうして知能のある強いイクテュスも撃破することができた。そのことが私達にさらなる自信を与え士気を上げる。

「ふ、ふふ……俺をどうする気だ? 拷問して殺す気か?」

「キュア星人はそんな野蛮な種族じゃないんでな。だが情報は吐いてもらわないと困る」

「馬鹿が……俺より優位に立ったつもりか? 追い詰められたのはお前達の方だ」

敵陣のど真ん中で、武装した人達に囲まれて自分はボロボロで動くことすらままならない。私だったら恐怖で
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